探偵が早すぎる 上・下

「その可能性はすでに考えた」シリーズが殊の外、面白かったので読んでみました。
個人的な好みで言えば、こっちのほうが好き。その理由としてはまず挙げられるのが、下巻の最後、橋田の告白のシーン。ああいう設定は大好きです。
あと、最後の大トリックもいい。もしかするとあそこまでの大掛かりなものは、ミステリー史上でも類を見ない、かも?
推理小説において、「事件を未然に防ぐことができない名探偵の存在意義」というものは、重要なテーマであった。しかし本作の探偵は、あらゆる事件を未然に防ぐ。これはなかなかにすごいことだと思う。この点に関して私の敬愛する作家、法月綸太郎氏がなんと言われるのか、聞いてみたい。
今年、1番のお気に入り作品かも。

探偵が早すぎる (上) (講談社タイガ)

探偵が早すぎる (上) (講談社タイガ)

探偵が早すぎる (下) (講談社タイガ)

探偵が早すぎる (下) (講談社タイガ)

嘘八百

上記、探偵はBARにいる3ではなく、本当はこっちを借りたかったのだが貸出中だった。
大恩ある方の著書が作中で使われていると聞いて見てみました。時間は105分と近年の映画にしては短いほうだが、非常に面白い作品だった。
千利休があまりにもメジャーなので、題材にしたのだろう。まぁ、それは仕方がない。映画である以上、興行収入というものを考えないといけないのだから。そういう意味では、事が済んだ後の蛇足とも思えるラスト数分も、物語としてのオチをつけなければいけない、見ている人たちが映画が終わったと思うような最後にしなければならないので致し方ないだろう。
それらを含めて考えても、秀作であることは間違いない。あと、キャストの配役が非常に好感が持てます。

嘘八百

嘘八百

探偵はBARにいる3

シリーズ3作目。一応、前2作も見ている。あんまり覚えてないけど。
ストーリーとしてはありきたり、と思うもののちょっと真犯人がわかるのが時間的に早いなと思ったら、そこからドラえもんの映画パターンとでも言うべき展開が。オチもそこそこで、面白かった。
一つ、第1作から気になっていることがあった。探偵の相棒、高田がすごく強いんだけど、何の格闘技を使っているのかなと疑問だった。調べた結果、空手らしんだが、作中の動きが空手っぽくないような気がするのは、私だけでしょうか?

聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた

前作のように、物語冒頭から事件が始まらないというところは、ちょっと残念だった。出来るだけはやく、時間が始まるという作品が個人的に好きだからである。グダグダ物語が続いてようやく100何ページ目に事件が! なんて作品はあまり好きではない。最も、時間のために必要な前置きであれば少々はかまわないと思う。
最初の推理パートから、仮説とその否定が繰り返され、中盤で思わぬ独白があり、その後、一体どうなるのやら、探偵はいつ出てくるのか? 等々と期待を持ちつつ読み進めると、さらなる推理合戦が展開される。前作『その可能性はすでに考えた』の感想で
「探偵が否定することを前提として探偵以外の推理が構築されている点が、ちょっとひっかかる。探偵以外は可能性さえ提示できればいいというのが、出発点になっているからかもしれないが、この設定自体がある種の逃げと言えるのではないだろうか。」
と書いたが、この点に関しても、改善というか進化していて、それが本命の推理でもいいかもというものもあった。
私が好きな作家は法月綸太郎氏なのだが、氏の作品に登場する探偵法月綸太郎は、何故か一度、推理を間違える。この原型は氏のデビュー作『密閉教室』に見られる。
同様にあらゆる可能性を考えているはずの上苙だが、必ず真相は見誤っている。必ず間違えるという欠点が有るからこそ、青髪にオッドアイの男前という完璧な容姿であっても、どこか身近に思えるのかもしれない。
推理力は高いが真相にはなかなかたどり着けない。この探偵で、クローズドサークルテーマの作品を読んでみたい気がするのは、私だけだろうか。

聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた (講談社文庫)

聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた (講談社文庫)

DESTINY 鎌倉ものがたり

劇場公開時に、見に行きたいと行っていたのを妻が覚えていてくれて、レンタルしてきた。娘が幼稚園のお泊り保育の隙きに視聴。
舞台は鎌倉なんだが、魔物や妖怪が当たり前に存在している。その舞台設定だけで好みのタイプではあるのだが、主人がミステリー作家でかつ実際の事件にも関わる探偵というのが非常にいい。いいんだけど、この映画ではそこはそれほど厚く扱われないのが残念だ。原作を読んだことはないのだが、きっと原作ではその辺りがしっかりと描かれているのだろう。これは実写化における問題点のひつtでもあり、仕方がないことでもある。映画は長くても2時間ちょっとで収めなくてはならない。それでいて物語としての山場も必要だし、もちろん起承転結も必要。一方で、原作ファンに対してある程度、原作に忠実な部分も必要になる。その一方で、全く原作を知らない人が見てもストーリーがわからなくてはならない。そういった諸々のバランスを取ってできたのがこの作品なのだろう。
なかなかに面白かった。