読書

インド倶楽部の謎

久しぶりの国名シリーズ。有栖川作品としては『乱鴉の島』以来かな? 以前のテイストのまま、所々で変化があったように思う。特に、捜査した事件にタイトルを付けていたという話を火村にするあたり、これまでの作品では考えられなかった展開じゃないだろうか…

探偵が早すぎる 上・下

「その可能性はすでに考えた」シリーズが殊の外、面白かったので読んでみました。 個人的な好みで言えば、こっちのほうが好き。その理由としてはまず挙げられるのが、下巻の最後、橋田の告白のシーン。ああいう設定は大好きです。 あと、最後の大トリックも…

聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた

前作のように、物語冒頭から事件が始まらないというところは、ちょっと残念だった。出来るだけはやく、時間が始まるという作品が個人的に好きだからである。グダグダ物語が続いてようやく100何ページ目に事件が! なんて作品はあまり好きではない。最も、時…

その可能性はすでに考えた

前から気になっていて、文庫化も知っていたのだがなかなか読む機会がなかった。 通常のミステリーだと探偵は謎をとこうとするが、この作品では探偵以外が謎をとこうとし、それを探偵が否定して奇跡であることを証明しようとする、という構成。非常に面白かっ…

屍人荘の殺人

鮎川哲也賞受賞作にして2018年の『このミス』1位ということで、図書館で予約した時には百数十人待ちだった。ちなみに、この作品を読んだことで2014年から2018年までの国内1位作品を読んだことになる。普通の人にとってはたいしたことないだろうが、私にとっ…

涙香迷宮

2017年のこのミス1位作品。なんとはなしに気になっていたのが、文庫化に伴い購入してみた。竹本健治作品は数年前に読んだ『匣の中の失楽』以来、2作目だ。 以下、ネタバレに近い発言がありますので、本書を未読の方はお気をつけください。

それまでの明日

原りょう氏の14年ぶりの新作。前作『愚か者死すべし』が出たときは、まだ過去の作品を読んでいる途中だったので、発売と同時に購入できなかった。 内容云々はさておき、とにかく沢崎シリーズの新作が読めるということだけで、多くの人が満足しているんじゃな…

ダメ人間

鈴井貴之氏の自伝的私小説。 非常に、身につまされると言うかなんというか、な内容。ただし、鈴井さんは最終的に成功しているでの、こんなにダメだったというのが物語として成立している。同じような境遇の人はいっぱいいるが、ほとんどの人が成功していない…

模倣の殺意

2012年に購入。確か東京に出張していて、泊まったホテルの下か近くに書店があったのでふらっと入って購入したんじゃなかったかな。その後、すっかりこの本のことを忘れていた。 一言で言えば古き良き本格推理小説だ。それもそのはずで、一番最初に本作が出た…

芸人迷子

生まれも育ちも京都で、幼少期から漫才落語を見て育った。当然、ハリガネロックの漫才も見てたし、松口VS小林も見ていた。 ハリガネロックが解散というニュースを見た時に、なぜ? と思ったのも覚えている。 本書はノンフィクションに分類されると思うのだが…

いまさら翼といわれても

前作読了から3ヶ月空いたのは、図書館で順番待ちをしていたから。間に『容疑者Xの献身』を読んだんだが、感想を書くのを忘れていた。まぁ、再読だしいいか。 さて、所謂「古典部シリーズ」の最新作で短編集。発表時期は色々で、長編の時間の流れの合間、合…

ふたりの距離の概算

古典部シリーズ5作目。幾つかの謎解きが散りばめられているが、メインの謎はなぜ新入部員は入部しないのか、と言うもの。 以下、ネタバレじゃないけど、若干それに近いことが書いてあるので、未読の方は注意してください。 色々と小ネタがあり、それを解決し…

遠まわりする雛

古典部シリーズ4作目にして、短編集。時系列で言えば、これまでの長編の間を繋ぐ作品。 率直な感想としては、このシリーズはあくまでも青春小説であって、ミステリーは構成要素の一つにすぎないというところだろうか。 そもそも、通常、ある作家の作品を読む…

クドリャフカの順番

古典部シリーズ3作目。 前2作は、トリックやロジックに対する評価はともかくとして、一登場人物が名探偵と認識される過程が描かれていたり、素人探偵が無理なく殺人事件に関わる方法が示されていたりと、個人的には非常に有意義な内容だった。 さて今作はと…

真実の真実の10メートル手前

『さよなら妖精』の太刀洗万智が主人公のシリーズ2作目。前作、『王とサーカス』は非常に面白かった。今作は短編集。 主人公が記者なので、古典部シリーズや小市民シリーズのように対象が日常の謎ではないのだが、本格推理小説と言われる作品群のように、誰…

愚者のエンドロール

古典部シリーズ2作目。 素人探偵役をいかに事件にかかわらせるか、と言うのはなかなか大きな問題である。特に殺人事件となると、なかなか難しい。普通に生きていて、殺人事件に巻き込まれ、そしてその犯人を探すなんてことは、経験できない。金田一少年の事…

氷菓

昨年から、集中的に米澤穂信氏の作品を読んでいるが、ようやくデビュー作にたどり着いた。 推理小説には探偵役がつきものだ。探偵役のもとに事件が持ち込まれることによって、話が展開する。では何故、探偵役に事件が集中するのだろうかというともちろん、名…

王とサーカス

図書館で『儚い羊たちの祝宴』を借りて読んでいた所、予約しておいた 『王とサーカス』と『氷菓』が届いた。人気を考えると、『儚い−』は延長できそうだが、他の2作は後が詰まっている可能性が高い。ちょうど『儚い−』の2話目を読み終えたところだったという…

満願

2015年のこのミス1位の作品。他にも幾つかのランキングで1だったり、直木賞候補だったりする作品だそうな。 面白いか、面白くないかということで言うと、間違いなく面白い。ここでも何度か書いていると思うけど、この作者は、いわゆるブラックな作品が好みで…

犬はどこだ

米澤穂信作品、5作目。今回は私立探偵が主人公の作品。以下、若干のネタバレを含むので未読の人はお気をつけください。 さて、今まで読んだ〈小市民〉シリーズ3冊、『さよなら妖精』、そして今回の『犬はどこだ』と、いずれもバッドエンドよりだと思う。その…

秋期限定栗きんとん事件(上)(下)

これって何故、上下に分かれているんだろう。1冊でも十分な分厚さじゃない? さて、この〈小市民〉シリーズの既刊分を全部読んだわけだけど、『秋期限定栗きんとん事件』が一番面白かった。シリーズ物として成熟したのか、あるいは僕が読み慣れたのか。まあ…

夏季限定トロピカルパフェ事件

巻末解説を読むまで、長編だと気づかなかった。どおりで、謎のない話が二つあったわけだ。 以前に読んだ『春期限定いちごタルト事件』や『さよなら妖精』ほど、違和感はなかった。これは僕が若者たちに近づいた、というわけでもないだろう。 長編としてみて…

さよなら妖精

お盆休み前に大学の図書館で、『あきらめのよい相談者』と『さよなら妖精』を借りた。前者は、完全に期待はずれで、何故この作品が創元推理短編賞を受賞したのか、と思ってしまう。 期待はずれという意味では、『さよなら妖精』も同じか。ガッチリした本格推…

戻り川心中

少し前に、ふと思いついて買ってみた。おもしろかった。 殺人事件が起きて、探偵がそれをがっつり解決するってな構成ではないけど、本格推理小説であることは間違いない。なにがいいって、雰囲気がいい。この雰囲気を出せる作品が書ける作家って、今はなかな…

慟哭

貫井徳郎氏のデビュー作だそうで、鮎川賞最終候補まで残ったものの、とれなかったとか。そういえばいつだったか、どなたか作家の講演会で「鮎川賞をとってもたいして売れない」という趣旨の発言があった。売れないというのは、部数がという意味だったと思う…

愚か者死すべし

沢崎シリーズ最新長編! といっても出版されたのは12年前だけど。 原りょう氏の作品が面白いことは間違いない。どの作品も、何度も読んでいる。一番すごいなと思うのは、1ページ目から既に事件が始まっているということ。本格物だと、孤島や人里離れた屋敷に…

弁護側の証人

数年前、購入して未読のままにしておいた本。 例の通り、読み始めてから読み終わるまで、結構時間がかかってしまったので、細部にある仕掛けに気づかづにいるかとも思うのだが、久しぶりに、読んでいる途中で「???」となり、数ページ戻って確認した。 な…

11枚のとらんぷ

昨年のディズニー行きの際、『春期限定いちごタルト事件』と一緒に借りた1冊。初泡坂妻夫だったと思うが、もしかするとなにかのアンソロジーで、亜愛一郎の短編を読んでいたかも。 感想なんだけど、一時期、新本格ムーブメントというのが流行った時期がある…

春期限定いちごタルト事件

率直に言うと、期待はずれだった。 面白いか面白く無いかで言えば、まぁ、面白いに入れていいんじゃないだろうか。でも、期待していたものとは違う。いろいろ書こうかなと思ったんだけど、書くことを考えていてあることに気がついた。 この作品、39歳のおっ…

怪盗グリフィン対ラトウィッジ機関

グリフィンシリーズの第二作。前作から、何年たったのだろうか、なんてことはどうでもいい。 話の本筋とは関係ないが、綸太郎シリーズの舞台は、東京だ。グリフィンの舞台は、アメリカ。いつか、京都を舞台にしたミステリーを書かれるのだろうか? あくまで…