奇面館の殺人

以下、ネタバレ注意です。
綾辻行人といえば、館シリーズ。その第9作目の『奇面館の殺人』だけど、はっきりいって、弱い。
近年、綾辻さんといえば本格よりもやや、ホラーよりと言う印象があった。いや、近年の作品は大して読んでいないので、あくまでも印象なんだが。何だろう、最初にも書いたけど、弱いんだよな。そのへんはご自身でもわかっているのか、最後に登場人物に創作上の苦労話を話させたり、あとがきで400枚くらいのコンパクトな長編本格と書いてみたりしている。ガッチガチの本格物ってのを書くのはきっとしんどいことなんだろう。少しだけだが、経験はある。だから、すべての作品において、それをすると法月さんのように寡作になるんじゃないかな。あるいは、有栖川さんの江神シリーズのように。でも、それでいいと思う。少なくとも、館シリーズはそうであって欲しいというのが、一読者の希望だ。他の作品がどれだけホラーよりで最後に、ちょっとしたミステリー的仕掛けがある作品であったとしても、館シリーズだけはガッチガチであって欲しい。これはわがままなんだろうか?
今作も、綾辻さんらしい叙述トリックがあり、中村青司が建てた妖しい館が出てくる。それだけで、期待してしまう。だからこそ、弱いと感じたのかもしれない。
最後に、一度も館シリーズを読んだことない人が、『十角館の殺人』から順に『奇面館の殺人』まだ読んだとして、どの作品が一番面白かったと思うだろうか。『奇面館の殺人』をどのように評価するのだろう。