『生ける屍の死』

やっと読み終わりました。以下、ネタバレがありますので、未読の方はお気をつけください。
さて、この作品を読み終わって一番最初に思ったのは「ために小説」だな、ということ。「ために小説」とは何かについては
[日記]雨降り - you-のまたやっちゃいました
に書いてあるので参照してください。
ミステリーというか、本格推理小説ってのはどうしても「ために小説」になってしまう。それは、仕方がないことだと思う。ネタを考えるときに、まず、核になる部分を考える。そして、その部分を生かすためにはどうすればいいのか、と考えていく。だから、多くの作品が「ために小説」だと言える。ただし、ここで間違えてはいけないことがある。“こんな密室トリックを思いつきました"というのを出発点にして、その密室トリックを使うことのみを考えて書かれた作品は、「ために小説」ではない。思いつき小説だろう。というのを、『生ける屍の死』を読んで強く感じた。この作品の世界では死者がよみがえるのだが、この作品はそのよみがえりというもののために書かれた作品だ。
ふと思ったんだけど、解決という出発点があり、そこから、物語の始めの方へ戻っていく。この時点では出発点から拡散されていく感じだ。しかし、本を読む方は逆で、拡散から始まってすべてが一点へと収束していく。この収束が綺麗であればあるほど、いいミステリーなんじゃないだろうか。つまり、この作品がそうだったということだ。

生ける屍の死 (創元推理文庫)

生ける屍の死 (創元推理文庫)