女王国の城
15年ぶりの新作だそうで、前作『双頭の悪魔』を僕が読んでからでも11年はたっていると思う。この間、短編は何作か発表された。しかし長編でしか味わえない、なんと言うべきか、一種の達成感のようなものがある。
以下、ネタバレは極力避けますがとりあえず隠します。
さて、本作に関しては発売前にここでも少し触れた。それを引用すると
「でも、果たして今更、書いてこのシリーズの魅力が継続されているのかというのははなはだ疑問だ。ミステリーでありつつしかし青春小説でもある。これが魅力だと思う。でも青春小説を書くにはいささか歳をとりすぎたんじゃないだろうか、作者が。そしてまた読者も歳をとりすぎたんじゃないだろうか。このシリーズを始めて読んだのは二十歳の時だった。当時大学生だった僕はミス研というものにもの凄くあこがれた。そして作ろうとした。でも、今は30歳も超えて一応、社会人として生活している。はたしてあのころのような気持ちで読めるのだろうか。あのころのように書けない作者に、よりもあのころのように読めない自分に失望するんじゃないか、なんて事は今、思いついたんだけど。」
さて、読み終わった今の感想だが、どうも違和感がある。作品としてのクオリティーが低いとか今までと違うとかそういうことが言いたいのではない。なんというか、作者自身もそうなんだろうが、今までのシリーズを踏まえつつしかし間が開いてしまったので手探りで書き始めた。読むほうも江神さんやそのほかのキャラってのは覚えているが細部までしっかりとおぼえているわけじゃない。だから手探りで読み始める。“確かこんな感じ”、“こうだったんじゃないか”というのが続き弱気な読者への挑戦状が現れそして物語が完結する。
単独の作品としてはよく出来ているし江神シリーズとしても及第点だろう。ただ15年は長すぎた。そういろいろな面で。それでもこういうことはできる。
面白かった。シリーズ第5作が出てもやっぱり買うだろう。
- 作者: 有栖川有栖
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/09
- メディア: 単行本
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