名作

名作は案外、読んでいないもので、世の中そういうもんだと思う。僕もミステリー好きとかいいながらいわゆる古典名作はほとんど読んでいない。海外物は苦手としているのではずすとしても国内物の古典もほとんど読んでいない。ただ古典作品てのは出会うタイミング次第だと思う。ここでちょっと昔話。
今から遡ること十数年。当時の僕は高校に入学したての1年生だった。当時、陸上部に所属しそれなりに速い選手だった。しかしうちの高校はクラブ活動に特別力を入れているわけでもなくまぁ、学生の自主性に任せて好き勝手できるクラブだった。で、僕自身も練習するよりは遊ぶ方が好きで遊びの合間に練習しているという感じだった。そんな陸上部での日々もしばらくが過ぎ夏休み前のある日のこと。今となってはなぜそんな話になったのか覚えていないのだが、なぜか陸上部の同級生二人の読書感想文を書くことになった。もちろんただではない。確か一人500円だったと思う。あ、そうそう。読書感想文なんだが個人的には苦手というか好きじゃないのだが書くのは苦手じゃない。むしろ得意と言うべきか。なので自分を含めて3人分ぐらい本を読む時間込みにしても1週間もあれば楽勝で書ける。とはいえただの小銭稼ぎで引き受けたのではない。引き受けた二人とも女の子だったのだが、そのうちの一人に気があったのだ。まぁ、一種のポイント稼ぎだな。ついでに書いておくとその子とは夏休み明けに付き合ったのだからまぁ、ある意味、感想文作戦は成功ともいえる。
いずれにしてもそういう経緯で感想文を書くことになりまずは『海と毒薬』を読んだ。そして真剣に本気で感想文を書いた。もちろんこれが気のある子の分である。で、最初はそのまま3人分書こうと思ったのだがなかなかそうもいかない。そのため急遽、別の本を探したのだがそこで行き着いたのが国語の教科書。僕のではなく姉のもの。そこに『心』の第三部が載っていた。で、第三部のみを読み感想文を書いた。
と、ここまでが前振り。いや『心』の第三部なんだが僕は非常に好きだ。2,3度読んでいると思う。しかしいずれも第3部だけ。1,2部があるというのは知っているのだが読んだことがない。たぶんこの先も読まないと思う。だって読むと第3部が嫌いになるかもしれないから。
とまぁ、名作なんてこんなもんだと思う。出会うタイミングが合えば読むし合わなければ一生読まない。ただ普通の作品以上に多くの人が出会うタイミングが多いのが名作なんじゃないかなと思う。
そんなこんなで。

海と毒薬 (新潮文庫)

海と毒薬 (新潮文庫)

漱石全集〈第9巻〉心

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