涙香迷宮

2017年のこのミス1位作品。なんとはなしに気になっていたのが、文庫化に伴い購入してみた。竹本健治作品は数年前に読んだ『匣の中の失楽』以来、2作目だ。
以下、ネタバレに近い発言がありますので、本書を未読の方はお気をつけください。
さて、本書は暗号ミステリと呼ばれているようで、確かに作品の最初から最後まで暗号づくしだ。殺人事件も起きるが、それはあくまでも添え物で、メインはやはり暗号だろう。暗号の解明により犯人を追い詰めるのもそうだし、事件が起きるのも一通り暗号文が開示されてからということになる。もっとも、最初に事件は作品の冒頭に起こっているのだが、それも結局は暗号の添え物でしかない。
もともと、暗号物ってのが好きではないのだが、それでもそこそこ楽しめたのだから、暗号好きにとってはすごく面白い作品なのだろう。それはさておき、一点だけ気になるところがある。今、手元に本がないので確認できないが、最初の方で涙香の隠れ家を示す漢文が出てくるのだが、その訓読がちょっと気になった。一応、日々、漢字と漢文に携わる仕事をしているので気になったのだが、もう一度、その辺を読んでみようかと思う。

涙香迷宮 (講談社文庫)

涙香迷宮 (講談社文庫)