『羊の秘』

やっと霞流一著『羊の秘』を読み終えた。で、感想なんだがネタバレするわけにはいかない。だからネタバレ感想は書かない。ただやはりどうしても作品の内容に触れざるを得ない。そこでこの作品を先入観なく読みたい方は以下は読まないでください、と思ったのだがけっこうきわどくネタバレかもしれない。なので文字色を変えて見えなくしようかと思ったのだがやり方がよくわからない。ご注意ください。と言うのもあまりにも不親切なので、これに変更。えい!
この作品、前半はいい感じ。全身を紙に包まれ口に矢印を入れられた死体と謎の時刻を指す古時計。髪が金色の塗られ着物を着た死体が雪と視線の二重密室で発見される。廃墟となった病院で球に固定された焼死体が密室に現れる。そのほか色々となぞめいたものが登場する。一体どうやって解決をつけるのか、そう思わずにいられないほど謎が満載。そしてついにすべての謎が解明される。・・・されるのだがその辺がもう一つだったと思う。前半の謎が多すぎるためか謎解きが消化不良に思える。そしてもっとも不満を感じたのは「偶然性」の多用である。確かに偶然そうなったと言われれば作中でそうなったのだから仕方がないといえば仕方がない。でも本当にそれでいいのだろうか?いや、たぶんいいんだろう。ただ僕個人がミステリーにおける偶然性の排除ってのを目標のひとつにしているから偶然性を多用した作品はもう一つと思うのかもしれない。元々この作品、法月綸太郎氏の推薦文をきっかけで買った作品。で、霞流一という人はここ数年、一番読みたいと思っていた作家でもある。この二つがあいまって必要以上に期待していたのかもしれない。決して悪い作品じゃない。色々と楽しめた。それに偶然性というのもこの作品のテーマから考えると計算の範囲内かとも思える。
さて次は何を読もうかな。そういえば『黒いトランク』を買ったような気がする。挑戦してみるか。

羊の秘 (ノン・ノベル)

羊の秘 (ノン・ノベル)