いまさら翼といわれても

前作読了から3ヶ月空いたのは、図書館で順番待ちをしていたから。間に『容疑者Xの献身』を読んだんだが、感想を書くのを忘れていた。まぁ、再読だしいいか。
さて、所謂「古典部シリーズ」の最新作で短編集。発表時期は色々で、長編の時間の流れの合間、合間の話で後付補強っぽいものもあったが、読み物としては十分面白いと言える。次回作がいつ出るのか、あるいは短編ならどこかの雑誌にすでに発表されているのか等々、知らないんだけど、残りの高校生生活も1年半。今後どのように展開していくのかを考える上でターニングポイントとなる作品ではないだろうか。
米澤穂信氏と言えば、各種ミステリー賞で1位を獲得し、押しも押されもせぬミステリー作家だ。「古典部シリーズ」もミステリーにカテゴライズされる作品であるということに異論はない。もっとも、個人的には青春小説が主で、ミステリー要素が副だと思っているが。そのあたりのことはさて置くとして、「古典部シリーズ」を読むと毎度、考えるのが「日常の謎」の持つ限界についてだ。
殺人事件を扱わず、身近にある謎を扱うのが「日常の謎」だ。「日常の謎」の最大の欠点は、謎の弱さという点だと想う。ややもすると「別にそんなことどうでもいい」となりかねない。もっとも、そうならないように作者は苦心するのだが。限界がある中で、質の高い作品を作り出しているのだから、間違いなくすごいわけで、僕が感じるのは僕個人が日常の謎と言うものに対して、ある種の畏敬の念を持っているからなのかもしてない。触るべからず、扱うべからず。ただ憧れて読むのみ。それが「日常の謎」である、と。もしそうだとすると原因は北村薫氏の『空飛ぶ馬』だろうな。いや、もう少し正確に言えば「砂糖合戦」だろうな。

いまさら翼といわれても

いまさら翼といわれても