氷菓

昨年から、集中的に米澤穂信氏の作品を読んでいるが、ようやくデビュー作にたどり着いた。
推理小説には探偵役がつきものだ。探偵役のもとに事件が持ち込まれることによって、話が展開する。では何故、探偵役に事件が集中するのだろうかというともちろん、名探偵だからだ。つまり、推理小説における探偵役はただの探偵では駄目だということである。
では、名探偵の定義とは何か。それは作中の登場人物が其の才能を認めているということであろう。もちろん、読者も認めている方がいいのだが、読者はあくまでも傍観者であり依頼人ではない。
シャーロック・ホームズ金田一耕助も登場時にはすでに名探偵だった。何故か。もちろん過去の実績があるからだ。では、実績のない者はどうすればいいのか。それはもちろん、実績を作ればいい。
このように、ただの人が名探偵へとなるプロセスを読者に提示している作品はあまり知らないのだが、この『氷菓』は間違いなく、それを提示している。
それだけでも十分評価に値する作品だと思う。

氷菓 (角川文庫)

氷菓 (角川文庫)