11枚のとらんぷ

昨年のディズニー行きの際、『春期限定いちごタルト事件』と一緒に借りた1冊。初泡坂妻夫だったと思うが、もしかするとなにかのアンソロジーで、亜愛一郎の短編を読んでいたかも。
感想なんだけど、一時期、新本格ムーブメントというのが流行った時期がある。本格推理小説の復古運動とでも言うのだろうか。これにより一気に本格物がミステリー界を席巻した。その後、どちらかと言うと、本格と言い切れないものが、なんというか中心になった。これらはいわば、無意識のパロディーとでも言おうか、敢えて少しずらしている、でも作者は本格物を書きたいと言う。その後、時間の経過と共にずれが大きくなり、最終的には全くの別物になるのだが、まぁそんなことはどうでもいい。何が言いたいのかというと、この作品は新本格ムーブメントなんかよりもずっと前の作品だ。だから雰囲気が全く違う。もう、なんというかありとあらゆるところから本格ですという雰囲気が、溢れ出している。それだけで読む価値がある。もちろん、内容面も。そこかしこに仕掛けが施されているし、伏線も貼られていて、回収もしっかりしている。ただし、不可思議な謎とその解明にのみ、力点が置かれているわけではない。だがら、がっちがちのを期待する人には少々、物足りなく感じるかもしれない。でも掛け値無しに、面白かったです。